北支農民暴動

 之は北支農民暴動の後から出て来た結論に他ならないので、初めから農民がこうした防共の必要(?)によって蜂起したのではないかも知れないが、併し伝えられる処によると、こうした防共の原則に立つ北支自治政権の樹立は、北支三千万民衆の絶対的要望を実現するものだというのだから、農民に初めからこうした動向が無かったと云い切ることも出来ない。仮に農民運動の初期に於ける赤化防止運動に関する一二の報道が誤報であったにしても、結果から判断して、そのはにかみ勝ちな誤報が、結局は当っていたのだということになる。 親日運動や反国民政府運動と、本来の赤化防止とが、真面目にどういう必然的な連絡を理論的に又直覚的につけられるのかは、容易ならぬ疑問であり、之によると蒋介石は共産軍の支持者ででもなければならぬ、ということにさえなるが、それは暫く措くとして、とに角赤化防止が農民の自発的要求であったか、又は之と必然的な関係におかれている結果になったのは、何と云っても、思想上の常識から云って理解出来ないことだ。

 抑々、赤化防止などということは、資本制社会に於て、この制度から直接に一定の生活利益を受け取っている人間にとっては、全く現実的な真剣な問題なのだが、そうでない人間にとっては全く概念的な余計な思惑なのであって、そういう人間の実際的な生活、経済的政治的要求、から見れば、極めて空疎な世迷言に過ぎまい。こうした観念的遊戯が仮に北支の農民の自発的な蜂起の原因の一つに数えられるとすれば、北支の農民は、インテリのように観念が過剰であるか、又は農民としての自分の日常の直接利害が何であるかを全く知らないような、想像も出来ない愚民であるか、になる。こんな農民が、自分自身の圧力によって、独立政権を樹立させたということは、到底考えられないことだ。

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