ギャング現象

 ギャング現象は勿論社会の比較的恒常な一現象であるから、いつの世にもどこの世界にも見受けられるものだろうが、併し平常時の市井の日常生活に巣食うギャング性は、必ずしもギャングの最高本質を顕彰するものではない。高々街の紳士などに見受けられるような低級ギャング性しか見当らない。本当の高級ギャング性が現われるのは、一般に云って社会の自然的社会的又は人工的非常時に於てであって、つまり恰も何等かの何々「精神」が高唱されねばならぬ時期に該当するのである。関東大震災という自然に基く非常時に際して、暴徒の「襲撃」に備えるために自警団的精神[#「自警団的精神」に傍点]が特別に緊張し、そして東京市民の幾十パーセントかが立派にギャング化したのである。同時に××××をやると青年団は国防精神[#「国防精神」に傍点]によって手術中の医者をなぐったり何かする。どれも公的乃至半公的なグループが曖昧に私的化した場合に他ならない。 警察は必ずしもこうした広範な意味での暴力団を弾圧しようとも思わないし、その能力もない。弾圧されるのは低級ギャングでしかない。それはさておき、内務省は日頃、特に警察精神[#「警察精神」に傍点]の涵養と発揚とに力を致している。警察部長は警察官の制服で部長会議に出席するよう特に厳命されている。警察の歌も出来るし警官の行進曲も出来た。さてこの澎湃たる警察精神を以て、非常時一たび至る時警察当局はどういう社会的機能を営むだろうか。無論警察自身が〔ギャング〕化すというようなことは絶対に不可能なことである。 警察当局(独り警察当局に限らず広く検察当局と云ってもいい)はこうしたことが絶対に不可能であることを、今から国民の頭にたたき込むためにも、始めた暴力団狩りは出来るだけ広く出来るだけ深く、又出来るだけ長く、遂行する必要があるだろう。[#地から1字上げ](一九三五)[#改丁]

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