日本の今日の政治方向

 日本の今日の政治方向を決めて行くものとして、大衆とか無産者大衆とか労働者農民とか云ったものを、政治の要素に数えないのはどうしたわけかと問われるだろう。併しここで云った政治という言葉には特別な約束があるのである。この特別な約束を有った政治というものが何を意味するかは今更云わなくても判ると思うが、処でそういう意味での政治を行なう責任を表面上[#「表面上」に傍点]担っているものは何かというと、それは資本家でもなければ軍部でもなく、政党政治家でさえなくて、実は取りも直さず官僚なのである。つまり官僚とは国家権力によって行政[#「行政」に傍点]を行なうもののことを意味するわけなのである。 処で一体この官僚というものが何であるかを、もうソロソロ考えて見なければならなくなる。官僚という言葉は官吏[#「官吏」に傍点]の一群を或る点から批評した言葉であって、官吏はややもすると官僚的になるということを云い現わす言葉だと見ればいい。官吏群が社会に於て或る一定の勢力を持ち、官吏同志のブロックが出来上ってお互いの間にギルド的な意識が生まれ、排他的になったり傍から特殊群と見做されたりする時、官僚(官吏の同僚関係)という観念が産まれる。官吏が資本家や政党や軍部に対して、又更に国民や社会大衆に対して、特殊な支配者的な政治勢力を意味するのは、全く官僚という資格に於てでしかあり得ない。 尤もここにいう官吏という言葉は必ずしも正確ではないので、所謂文官ばかりではなく武官や軍部の文官も含むし、警察官も宮内官吏も含んでいる。そればかりではなく、所謂官吏だけではなく一般の公吏や官公庁の雇員までも含むことが往々だ。とに角広くお役人又はお役人に準じるものを、法律上の用語としてはとに角社会上の用語としては、広く官吏と見做すことが出来る。さてこういう広い意味での官吏の数は今から十年前の統計によると百万人を越えている。だから官吏は官吏としてそれだけで日本の社会に於ける特別な階級か層をなすようにも思われるが、併しそれは単に形式的に考えるからそうなのであって、内容的に当って見れば、その内には勅任から雇員人夫にさえ至る階級別[#「階級別」に傍点]があるのである。雇員の下っ葉役人や人夫である小使がいくらお役所を嵩に着て横柄に構えようとも、実際に官僚という資格を有つものは恐らく高等官の一部分のものでしかあり得まい。気持ちは如何に官僚的でも、それだけで官僚という実際の資格は備わらない。官僚という以上国家権力による行政上の実際的な権威が必要なのだ。

— posted by id at 12:40 pm  

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