社会的地位を高め

 軍部がこのような意味に於ける社会的地位を高め、その有力さを急に増して来たのは、近年では云うまでもなく満州行動以来のことである。それまで、特に軍備縮小(軍事教官の学校への就職・其の他)時代の軍部の社会的地位が決して高いものでなかったのを、世人は忘れはしないだろう。それと同時に併し、官僚の影も亦、決して当時は今日のように濃くはなかった。夫も人の知る処だろう。つまり、だから非常時(満州行動に原因する)以来、軍部と官僚との、社会的地位が急激に高騰したということは、常識にぞくする。 だがこうした新しい現象は決して、今迄にその地盤のなかった処に、突然発生したのでもなければ、況んや偶然に発生したのでもないということを、今注意しなければならない。というのは日本に於ける今日の官僚と軍部との有力さは、実は今日に始まったことではなくて、日本資本主義の成立条件そのものから来た処の、日本資本主義のタイプに固有な性質に由来するのであって、金融資本の段階に這入ってもその固有性質は本質的な変化退化を被らぬばかりでなく、金融資本段階に於てはその段階に特有な深刻さを以て、この固有性質が却って愈々著しくなって来たのだという点が、重大なのである。 日本に於ける「ファシズム」の日本特有のタイプを今日決定しているものも、取りも直さず日本資本主義の成立条件に固有する処のものであって、日本型ファシズムの本質は、ファシズムとして見れば日本に於ける封建的条件を地盤として利用することによって初めて成立し得たファシズムであり(一般にファシズムは金融資本主義段階に於ける一つの必然的――但し不可避的だとは限らぬが――な支配形態だ)、又封建的残存要素から云えば、この要素がファシズム的形態を採用せざるを得なくなった処のものに他ならぬ。 処で、この封建的残存要素は、他ならぬ官僚的・軍事的(又警察的)な強調をもった支配形態として、明治の古くから現われているのであり、夫がその後の今日に至るまでの日本の官僚と軍部との社会的地位を、決定して来ているのである。で今日の官僚と軍部(文官と武官)の社会的地位は、決して偶然ではなく、又決して新しい現象にぞくするものでもない。日本の資本主義成立の特殊な根本条件がそうさせているのであって、従ってここから、広義の官僚(文官及び武官)の地位が有つ、社会的な重大意義が、判るのであり、又今日彼等が何故にかくもその社会的地位について、自信を有ち得るのか、ということの説明も初めてつくのである。

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